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鮮やかな青
第6章 輝く命
「土地や銭、米は万人にとって重要であるから、取引の材料としてはいつでも等価交換だ。けれど茶器は、人により価値が薄まったり、過分に高まったりもする。欲しいと思う人間にとっては、本来なら不釣り合いな条件であっても良いと思うくらいに」
確かに、茶器一つで交渉がまとまるならば、土地などを差し出すより安上がりだ。さすが交渉事には強い兄だ、と思ったが、兄はさらに言葉を続けた。
「――そう、父様なら言うだろうけどね」
「では、兄様はどう思われるのですか?」
「僕はもっと単純な話だよ。娯楽の一つもない世の中なんて、面白くないじゃないか」
兄らしからぬ堕落した発言に、私は思わず眉をひそめてしまう。しかし兄はそんな私に苦笑いを向けると、小さく首を振る。
「もちろん、日々の鍛錬や基本の礼儀は大事だよ。それが出来るのは、大前提だ。毎日気を張って働いて、農民ならば米を作って、商人なら物を売って……生活が安定して回るようになったら、人は何を求めると思う?」
兄の問い掛けに、私は迷う。もし私が領地の経営を安定させたら、どうするだろうか。その時は本家のため、さらなる発展を望むだろう。