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鮮やかな青
第1章 兄の存在
「いえ、大内様の力添えあってこそ毛利は今があるのです。その大恩を思えば、少しの痛みなど」
「私が入っても気付かないくらい辛かったのだろう? ここにあの方がいる訳ではないのだ、建て前はいらぬぞ」
私は、迷う。この男に心の内を晒け出すか、否か。確かに陶は大内家の重臣、だが近年文治派を重んじる義隆は、武断派の筆頭であった陶を遠ざけている。陶はそれを恨み、たびたび文治派の武士を追いやろうと企んでは義隆に咎められていた。
が、それだけ陶が勝手を働いても、不仲になっても、義隆は陶の首を求めはしなかった。それは、二人が今まで築いた関係があるからかもしれない。
陶は心を開くべき人間か、それとも破滅を招く人間か。少し時を置いて出たのは、建て前を突き通すという答えだった。
陶は、元春兄上と義兄弟の契りを結んでいる。おそらく、父や兄にも接近しているだろう。大内家の敵である尼子に対抗するには、毛利という盾が必至。武断派である陶が、それを分からないはずがない。
だとすれば、私まで深く親交すれば、いざ陶が義隆と反したその時、陶に引きずられてしまう。彼への根回しは元春兄上に任せ、私は距離を取るべきだろう。