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鮮やかな青
第2章 歪んだ性癖
「兄が……王、ですか? 将と王の違いとは、なんでしょうか」
「優れた将は、一の恵みで十の領土を得る。優れた王は、一の領土で十の恵みを得る。領土を広げるのは簡単な事ではない、だから将は讃えられる。しかし最後に民が求めるのは、王なのだ」
それは一見同じ結果のようで、全く異なるものだ。日本の土地は、限られたもの。広げられる領土には上限がある。最後に立つのが王という理屈は、確かに正しいだろう。今が乱世である、という事実を除けば。
「では、十の領土を守るのに優れた者はどちらでしょうか。領土を広げ、恵みを得る。それだけで、国は回りません」
土地を守るのは、武士の役目である。訊ねてはみるが、それは将だと私は考えていた。だが義隆は、貴族のような高い笑い声を上げて答えない。
「義隆様?」
「今の問いを、余は隆元に問うた事がある。隆元は、領土を守るのは民そのものだと答えたよ」
「民そのもの……」
戦となれば、民も兵として徴集される。その点を考えれば、民が答えでもおかしくはないだろう。いくら将が優れていても、現実に一騎当千が成せる訳ではないのだ。