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鮮やかな青
第2章 歪んだ性癖
ともは布団の上に座ると、改めてお辞儀する。礼節を知る、という事は、おそらく私達毛利が彼女の兄を強引に仏門へ追いやった事も知っているはずだ。にも関わらず、彼女は憎しみを表に出す様子はなかった。
「景さまは、お酒はよろしいのですか? わたしを気づかって遠慮されているなら、戻ってくださっても大丈夫ですよ」
「いや、私はそれほど酒は呑まないから。父が、酒は呑みすぎると毒だからと、常日頃からうるさくてね」
あまり利発な女児というのも、どう接していいか分からず私は内心戸惑う。男児ならば賢くてけっこうなのだが、彼女は名目上妻である。幼くとも妻として扱うべきか、それとも女ではなく童として扱うべきか。すぐに態度は決まらなかった。
「景さまは、ご自身のお父さまと仲がよろしいのですか? お父さまとは、どのようなお話をするのでしょう」
何気なく口にした父という言葉に、ともは食いついてくる。仇でもある元就という存在が気になるのだろうかと勘ぐるが、続く言葉に私は自分の疑いを恥じた。
「わたしは、自分のお父さまの事を覚えていないのです。お父さまとは、どのようなものでしょうか」