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鮮やかな青
第2章 歪んだ性癖
彼女の父は、彼女の生まれ年に亡くなっている。これは誰ぞの陰謀ではなく、戦での名誉ある討ち死にだ。どんな死に様であったか話には聞いただろうが、彼女が覚えていないのも当然だ。もしかすると、父親の方もほとんど娘と顔を会わせぬまま死んだのかもしれない。
「父とは、いると案外小うるさいものだよ。手紙を送ってきたと思えば、酒は呑むなとか朝は早起きしろとか、説教ばかり。すぐ会いに来いと要求し、行けば呑むなという酒をたらふく出して、また説教する」
「楽しそうですね」
「ともは私の妻となったのだから、今日からそれが父になるのだよ。遠慮なく、面倒くさがるといい」
父を失い、兄をも失った一人の少女。支えてやれるのは、もはや私しかいない。子どもの純粋な心を疑うより、父となり兄となり、支えるべきだ。私は彼女に手を差し出すと、改めて挨拶した。
「これからは、二人で共に生きるんだ。よろしく、とも」
「はい!」
彼女はためらいなく、私の手を取り頷く。小さな手が、私を迎え入れてくれた事。共に歩む意思を示してくれた事に、私は心から安堵した。