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鮮やかな青
第2章 歪んだ性癖
筆まめな父は、すぐに了承の旨を伝える手紙を返してくる。細かな調節を終え、時を作り、私はともと連れ立って、故郷である吉田郡山城へと足を運んだ。
「景さま、ここが景さまの育ったお城ですか?」
輿から顔を出し、山道から覗く景色を見ながら、ともは目を輝かせる。ほとんど高山城から出た事のない彼女にとっては、この田舎の風景も新鮮なのだろう。
「ああ、ここはいつでも変わらないよ。小さくて、静かで、しかし人々は豊かで。私はこの空気を吸うたび、初心を思い出す」
今こそ大内に目をかけられるまでに大きくなったが、かつて毛利は脆弱な国衆でしかなかった。それを盛り立てたのは、父・元就の技量才覚一本のみ。父もそれを忘れないようにと心掛けているのか、他に領土を広げても、吉田郡山から本拠を移動する様子はなかった。
「でも、こうして見ると、細かいところは変わっているね。前にはなかった堀が増えているし、あちらにも……」
つい築城の話を口にしてしまったが、ともに話しても理解出来るはずがない。慌てて口を閉じるが、やはりともはぽかんとした顔をしていた。