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鮮やかな青
第3章 兄の手
 
「心配をかけてしまったね。大丈夫、父の長い説教に、少し疲れてしまっただけだから」

 私がしゃがんで視線を合わせ、頭を撫でてやれば、ともは安堵したのか笑みを浮かべる。一方兄も苦笑いを浮かべ、うんうんと頷いた。

「ああ、だからか。隆景、でもあまり父様を責めないでくれ。この間の書状、祐筆でなく隆景の自筆だっただろう? それがよっぽど嬉しかったのか、僕に見せびらかして自慢していたから。少しでも長く顔を見たくて、つい長話になったんだと思う」

「見せびらかす……? はあ、何をやっているんですか、あなた方は」

 たかだか手紙の一つや二つに、いい大人が何をはしゃいでいるのか。私が溜め息を漏らせば、兄は呑気に呟く。

「僕も、隆景から自筆の手紙を貰いたいなあ」

「用事もないのに、なぜ手紙を送らなければならないのですか。紙だってただではないのですから、大事にしてください」

 すると今まで全く堪えていなかった兄が、不意に顔を曇らせる。が、それは見間違いかと思うくらい一瞬の内に、表情は笑顔に戻る。

 私は思わず目を擦り兄を見返してみるが、やはり兄はいつも通りの兄であった。
 
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