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鮮やかな青
第3章 兄の手
 
「手厳しいな、隆景は。まあ、疲れたなら、ゆっくり休むといい。あの父様の調子じゃ、夜はまた長くなるだろうから。それじゃ、また」

 兄は私を気遣ったのか、そのまま立ち去っていく。大内が将と王の違いがどうとか話していたが、私は兄にそれを訊ねる機会を見つけられなかった。そんな事、すっかり頭から忘れていたのだ。刹那に見せた、憂い顔に目を奪われて。

「……景さま、大丈夫ですか?」

「え? あ、ああ……大丈夫、だよ」

 ともが声を掛けなければ、私はいつまでもこの場で呆けていたかもしれない。しかし、幼子を放っておく訳にもいかない。ひとまず気持ちを切り替え、前に目を向けた。

「あの……景さま、お部屋に戻らないで、遊んでいてごめんなさい」

「ともが謝る必要はないよ、兄様が声を掛けたのに、無視をしたらおかしいだろう? ともにとっても、兄様は家族なのだから」

「家族……」

 するとともは兄の置いていった絵を手に取り、やけに寂しそうな目をして見つめる。

「――お父様」

 そういえば、亡くなったともの父親は、ちょうど兄と同じ年頃だ。彼女が、兄に自身の父を重ねるのも、不思議ではない。
 
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