この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
鮮やかな青
第3章 兄の手
「手厳しいな、隆景は。まあ、疲れたなら、ゆっくり休むといい。あの父様の調子じゃ、夜はまた長くなるだろうから。それじゃ、また」
兄は私を気遣ったのか、そのまま立ち去っていく。大内が将と王の違いがどうとか話していたが、私は兄にそれを訊ねる機会を見つけられなかった。そんな事、すっかり頭から忘れていたのだ。刹那に見せた、憂い顔に目を奪われて。
「……景さま、大丈夫ですか?」
「え? あ、ああ……大丈夫、だよ」
ともが声を掛けなければ、私はいつまでもこの場で呆けていたかもしれない。しかし、幼子を放っておく訳にもいかない。ひとまず気持ちを切り替え、前に目を向けた。
「あの……景さま、お部屋に戻らないで、遊んでいてごめんなさい」
「ともが謝る必要はないよ、兄様が声を掛けたのに、無視をしたらおかしいだろう? ともにとっても、兄様は家族なのだから」
「家族……」
するとともは兄の置いていった絵を手に取り、やけに寂しそうな目をして見つめる。
「――お父様」
そういえば、亡くなったともの父親は、ちょうど兄と同じ年頃だ。彼女が、兄に自身の父を重ねるのも、不思議ではない。