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鮮やかな青
第3章 兄の手
 
 私は自分の欲ばかりに目を向けて、何をしていたのか。小さな子どもの寂しさすら気付けない余裕のなさに、情けなさを覚えた。

「また明日、遊んでもらおうか。せっかく顔を出しに来たのだから、少しはこちらにも構ってもらわないとね」

「は、はい!」

 ともは目を輝かせ、大きく頷く。曇りのない瞳は、私の心を浄化するようだった。

「兄様と、何を描いていたんだい? これは……蝶?」

「はい、お庭を飛んでいた蝶を描いてくれました。隆元さま、とても絵が上手なんです」

 ともの言う通り、その絵はただの手慰みではないものがある。そういえば以前、兄があれこれ趣味に没頭して、父に武芸を磨けと雷を落とされた事があった。これだけ極めていたのなら、その分練習に時間も掛けたに違いない。武芸をおろそかにしていると思われても、仕方ないくらいの出来だった。

「それと、景さまを描いてもらいました。景さまは、小さな頃から賢くて可愛かったと、隆元さまがおっしゃってました」

「私を?」

 ともが見せてくれた二枚目の絵には、ともと同じ年頃の幼い少年が描かれている。それは確かに、私の似顔絵だった。
 
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