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鮮やかな青
第3章 兄の手
毛利に伝えられた陶の企みは、大内の当主の交代であり、権力の簒奪ではなかった。無能と化した義隆を隠居させ、義隆の幼い実子を当主にすげ替え、その子が大きくなるまでは国衆による合議で行く先を決定する。だが少し陶が手を加えれば、下克上が出来る状況である事も違いはない。兄が疑うのも、無理はなかった。
「いくら近年曇りが見えたとて、大内には大恩があります。もし目的が野心であるなら、大内の家臣として、見逃していいはずがありません」
「確かに、陶に大内の兵力が移動されるのは困るな。こちらが無理だと再三言ったにも関わらず、先の尼子攻めを強行したのは奴だ。あやつが頭になれば、また無茶な戦を押しつけられるとも限らない」
「義隆様の政に、限界が来ているのは確かです。苦しむ民を思えば、このまま日和見も悪手とは思いますが……陶様の思うままにしていいものか」
「お前の憂う気持ちは分かるぞ、隆元。だがお前の言う通り、もはや義隆を頭にしておく利はどこにもない。毛利が手を加えられれば一番だろうが、我々にそこまでの力がないのも事実だ」