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鮮やかな青
第3章 兄の手
 
 毛利は元々大内の敵である尼子家に仕えていたが、父の代で寝返った家だ。目をかけられているとはいえ、新参者である事に違いはない。もし毛利が陶と同じ事を企めば、譜代の臣に阻まれるのは必定。大内の重臣である陶でなければ、当主交代はなし得ないのだ。

「陶と義隆の絆は、お前が一番知っているだろう。それに大内に恩があるのは当然だが、毛利は陶にも世話になっている。陶の忠義を信じてやれ、隆元」

「……分かりました」

「今回の件、毛利は静観を貫く。どう転ぼうが、片方に深い肩入れはせぬ。後は結果が出てから、身の振りを決めるだけだ」

 毛利の先を思えば、その結論は最善だろう。兄は思うところがあるのか、どこか厳しい顔をしていたが、反論はしなかった。元春兄上も、軽い調子で頷く。

「家族の結束がなければ、家は簡単に崩壊してしまう。一時の情に流されて、真に守るものを見誤らぬようにな」

 父はそう話を締めると、私だけを引き留め兄達を下がらせる。私にだけ説教とは何が悪いのかと嫌気が差したが、口を開いた父は、まだ将のままであった。

「隆景、これはお前だけに話す事だ。胸の内に秘めておくように」
 
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