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鮮やかな青
第3章 兄の手
もし父が予測する未来が現実に起これば、大内に気持ちの残る兄が激怒するのは目に見えている。曲がりなりにも兄は毛利の後継者、その兄が新たな首領となった陶と諍いを起こせば、毛利には不利である。
「隆景、我々はいつまで、人に頭を下げなければならない?」
しかし私の疑問は、父の一言で晴れる。私が目を見張れば、父は察したのか強気な笑みを見せた。
父は、この機に更なる躍進を目指しているのだ。大内家の動揺、謀反による権力簒奪への反発、これらは必ず戦乱を招く。そして混乱したその時が、領地の奪り時だ。
生涯家臣でいるつもりなら、新たな首領へ媚びる必要もある。だが、自らが頭となるつもりなら、この機に、へつらう必要はない。
「離反には、大義が必要だ。信念なくほいほいと権力を渡り歩く者を信じる臣はない。隆元は、いずれ来る独立のための鍵だ」
「では、元春兄上は保険ですか」
「陶が思う以上に出来人の可能性もあるからな。あやつには、陶と繋がってもらった方が好都合だ」
二人の兄をどう使うか、父の意図は理解した。となると、これを私に話した意図も読めてくる。その重大さに唇を噛めば、父は砕けて笑い飛ばした。