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鮮やかな青
第3章 兄の手
数日間の滞在の後、帰ると告げれば父は拗ね始める。まったく、外では謀将だの呼ばれているくせに、家の中へ入ると道理の効かぬ方であった。
「どうしてせっかく来たというのに、すぐ帰るのだ。ひと月やふた月いたって構わんだろうに」
あからさまにふてくされる目の前の父に、私はつい理屈で返してしまう。こんな事は、本来父も重々承知しているはずではあるが。
「小早川の家もあるのですから、いつまでも実家に留まっている訳にもいかないでしょう。あまりこちらに滞在しては、向こうの家に不満があるのかと思われてしまいます」
いくら乗っ取りと言えど、一応は友好的な婚姻である以上、小早川をないがしろには出来ない。入り婿という立場は、中々に面倒なものだ。
「元春は、まだ帰らぬぞ」
「元春兄上と私では、立場が違うでしょう。もうとっくに世継ぎもいる兄上と、婚姻を結んで間もない私を一緒にしないでください」
「しかしだな、お前が帰っていると噂を聞いた五龍が、こちらへ来たいと言い出しておって」
私はその名を聞いて、思わず身震いしてしまう。五龍とは、五龍城を治める毛利の重臣、宍戸隆家殿の嫁であり、私の実姉である。