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鮮やかな青
第3章 兄の手
が、私はこの姉が苦手である。幼い頃はよく、私が女のような顔つきをしていたのをいい事に、人形のように引き回されて玩具にされていた。本人は私を可愛がっているつもりなのだろうが、例えるならば、それは虎と鼠の戯れのようだった。
「姫はお前に会いたくて言っておるのに、お前がいなければ悲しむだろう。なんとか、ならないか?」
「来ると決めた後ならともかく、まだ言い出しているだけなら止めさせてください。とにかく、私は帰ります。絶対帰りますから!」
姉上の我が儘が、ともに悪影響を及ぼしても困る。なんとしても、帰らなければ。私が語気を強めれば、父はようやく諦めたのか、肩を落とした。
「そうか、寂しくなるのう」
「今生の別れでもあるまいに、そうしょげないでください。次は正月、向こうでの応対が落ち着いたら、また来ますから」
「正月まで来るつもりはないと申すか! 冷たい奴め」
親兄弟が殺し合う事も不思議ではない今の世で、ここまで呑気な事を言える父の精神が分からない。私は毛利のため、滞りなく政を進めようと努力しているのに。