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鮮やかな青
第3章 兄の手
 
 私にとって五龍は歳の離れた姉であるが、兄から見れば元春兄上より近しい歳の妹である。庇う気持ちは分かる。が、なんだか妙に苛立ちが止まらない。

 大人しくて、聞き分けのいい弟。やはり兄が抱いている私の印象は、どこまでも幼い。私はもう、小早川の当主であるというのに。

「……それで、何の用ですか。まさか本当に邪魔をしに来た訳ではないでしょう」

「あ、うん。実は……」

 姉上の事はひとまず置いて問いただせば、兄は細い襖の隙間からするりと部屋へ入ってくる。相変わらず、武将にしては細い方だ。そして手には、何か紙を握っていた。

「今、父様と相談しながら城を改修しているんだけど、せっかくだから隆景の屋敷も作ろうと思うんだ。帰るたび客間じゃ、落ち着かないだろう? 屋敷があれば、気兼ねなく休めると思って」

 兄が持っていたのは、城の見取り図。床にそれを広げると、とある箇所を指差す。

「元春の屋敷がこの辺りだから、隆景はここがいいと思うんだけど。隆景は、どこか希望はあるかい?」

 兄の指差す場所に、さしたる問題はない。だが私は、あえて違う箇所を指差す。

「私は、ここがいいです」
 
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