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鮮やかな青
第3章 兄の手
 
 そう告げれば、兄は一瞬目を丸くして、困惑の表情を浮かべる。そうなる事は、私も重々承知だった。そこはもう、別の人間が住んでいる箇所なのだから。

「隆景……よく見てみようか? どこがいい?」

「だから言ったでしょう、ここがいいんです」

 私がもう一度他人の住居をつつけば、さらに兄は眉を下げる。大人しくて聞き分けのいい弟が、そんな我が儘を言い出すとは思っていなかったのだろう。

「隆景、分かってて言ってるなら、ちょっと考え直そうか。他にもっといい場所があるだろう?」

「嫌です、ここ以外に建てるつもりなら、私は一歩たりとも屋敷に入るつもりはありませんから。絶対ここにしてください」

「そんな我が儘言わないで、考え直してくれないか? わざわざ人を追い払って作り直すんじゃ、皆に迷惑を掛けるんだよ?」

「だからなんですか? 兄様は、私にばかり我慢を強いるのですか。弟の頼みが、聞けないと?」

 私は、少し意地になっていた。本当ならば、そこまでこだわる理由などない。しかし、兄が私を刺激しないよう、子ども扱いのまま説得する声を聞いていたら、突っぱねたくなってしまったのだ。
 
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