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鮮やかな青
第4章 激動の年
「ああ、これだけ積もれば充分だよ」
私が頷けば、ともは穴が開く程私を見つめる。遊んでほしい、という事なのだろう。
すると侍女の一人が飛んできて、ともの肩を取る。
「とも様、殿はお忙しいのです。今日は、わたくし達と遊びましょう」
侍女に言われずとも、ともはきちんと理解している。だから目を輝かせても、口では何も言わなかったのだ。なんといじらしい事か。そんな健気な子の願いなら、叶えてやりたいと思うのが人の心というものだ。
「少しくらいなら構いませんよ。しかし……雪合戦なら、二人では寂しいですね。皆も、こちらに」
「しかし、殿……」
「いいのです、ともの願いなら、何でも叶えてやりたいですから」
ともが満面の笑顔に変わると同時に、侍女の顔も赤くなる。
「は、はい! ただいま、履き物をお持ちいたします!」
先程より声が高くなった侍女は、今にも飛び跳ねそうな勢いで他の侍女達に声を掛ける。何が彼女をそこまで興奮させたのかは分からないが、それからの行動はとても早かった。
小さな子どもと、女相手の雪合戦。本気で挑むような遊びではないが、働き詰めの頭にはちょうどいい気晴らしだった。