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鮮やかな青
第4章 激動の年
「景さま、お強いですね。景さまが雪玉を投げれば、みんな逃げられません」
「私は男だからね、女に負けてはいられないよ」
「わたしも、たくさん練習して強くなりたいです」
ともはそう言いながらも、日の傾きを気にして空を見上げる。ともが気にする通り、私はもうそろそろ、仕事に戻らなければならないだろう。
「とも、動いて汗も掻いただろうし、そろそろ中へ戻るように。病で倒れれば、皆が悲しむ」
ともの手を取ってみれば、すっかり冷たくなっている。少しでも温かくなればと握れば、ともは赤い頬を緩めた。
「景さま、大好きです」
「ありがとう、とも」
楓のような小さい手は、すぐに熱を帯びる。名残惜しいが、私は手を離し侍女の皆へ頭を下げた。
「それでは皆さん、ともをよろしく頼みます」
侍女達が頷く中、ともは大きく手を振って仕事へ戻る私を見送る。このまま、大きくならず幼いままなら――勝手な想いを頭に巡らせて初めて、私は兄の態度を思い出した。
私はとものように可愛げこそないが、きっと兄も、今の私と同じ思いを抱いているのだろう。兄を理解出来れば、残るのは我が儘を言った事への後悔だった。