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鮮やかな青
第4章 激動の年
半分を今までの酒師に頼めば、これまでの信用により多少値引きも利く。その余剰を新たな酒師に乗せれば、苦もなく新たな酒師の作る酒の値段を上げられるだろう。
「早速、時間を空けて私が交渉に向かいましょう。兄様の厚意、無駄にしてはなりません」
「乗り掛かった船です、拙者も同行しましょう。どれほど旨い酒なのか、興味もありますしね」
今までの交渉も信頼した者に適正な価格で持ち掛けてはいたが、自ら動けと言うならば試す価値はある。交渉の約束を取り付けるため、私はすぐ書状をしたためた。
そして、後日。乃美殿と共に、私は噂の酒師の元へと向かう。小さな商売で構わないから、と難色を示していたが、彼の酒蔵はしっかりとした設備をしていた。
「殿様自ら足を運ばれるとは、光栄です」
酒師本人は、想像していたよりもずっと若い男だった。若いからこそ、新たな技術を求め味の向上を得られるのかもしれない。喋りが好きなのか、彼は私達に酒蔵の中を見せながら、作り方を説明してくれた。
乃美殿は私よりも詳しいらしく、酒蔵を眺めながら呟く。
「旨い酒とは、諸白だったのですね。作るのも手間でしょう」