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鮮やかな青
第4章 激動の年
慌てて首を振ると、私はすぐに話を逸らす。しかし、豊後の大友が伴天連に通じているのは本当だ。そちらは伴天連と馬が合ったのか、かなり厚遇している。遥か昔、鎌倉の世より続く名家だけあって、大友も優れた政治手腕を持っていた。
「しかし豊後は遠いですね。我々のような庶民には、夢のまた夢です」
酒師は遠い目をして、溜め息を漏らす。これは、話を通す好機――私は首を横に振ると、拳を握り口を開いた。
「本当に、夢で終わらせるつもりですか?」
「え……?」
「今日ここに来て、はっきりしました。あなたは向上心があり、真摯な人間です。その心とこの酒があれば、小さな酒蔵では収まらない、大きな財を得られるでしょう」
手広く商売する気はない、という言葉は、彼が経済を知らぬから出たものだ。大きな仕事を掴めば、どう世界が変わるのか。それを知れば、彼は必ず話に乗る。書状のやりとりでは分からない本心を、私はようやく理解した。
「今回の取引を受けていただけるなら、私達はこれだけの値を出します」
詳しい取引の内容を記した書状を手渡された酒師は、中身を見てすぐに目を見張る。