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鮮やかな青
第4章 激動の年
「こ、このような大金を……!?」
「もし皆がこちらの酒を気に入り、来年もと望むのであれば、その時は半分ではなく全てをこちらで頼みたいと考えています。それだけではありません。武家に気に入られ評判となった酒だと名が広まれば、酒の価値も上がります。そうして財を築けば、豊後へ渡る金も手に入るでしょう」
「豊後に……」
「そして小早川家はあなたの酒を力の源として士気を上げ、さらなる飛躍を遂げます。私達毛利が大身となれば、伴天連が向こうから飛び込んでくるかもしれません。そして南蛮酒を手にしたあなたが、新たな技術を手に入れたら――さらにこの地は栄えるでしょう」
始まりは一献の酒であっても、波紋のようにそれは広がり文化を生み出す。酒師の顔が、戸惑いから凛々しく変わる。彼は、一歩を踏み出す力のある人間だ。
「私は、この諸白のように澄んだ政治を心掛けていくと誓います。ですからあなたも、夢を諦めずに前へ進みませんか」
「……さすが、殿様は見ている世界が我々とは違いますね。そうですか、酒には……それだけの力があるのですね」