この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
鮮やかな青
第4章 激動の年
私が手を差し出せば、彼はしっかりと握り返してくる。肌に感じる血潮の熱は、花押よりも深く信頼を感じた。
「殿様のお気に召す酒を、必ず用意します。殿様のようなお方に飲んでいただけるなら、きっと酒も本望でしょう」
皆が気に入れば来年も、とは言うが、この真っ直ぐな気性の男が作る酒を嫌う者が出るはずもない。新たな小早川家の幕開けに、これ以上に相応しい酒はないだろう。掴み取る事の出来た未来に、私は熱く握手を交わした。
そして、忌まわしく古い時は過ぎ去る。宴で騒いでいた者達も、除夜の鐘が鳴り始めればぴたりと黙った。
静けさの中、ゆっくりと響く鐘の音。私の奥底へ住み着いた魔をも打ち払ってくれれば、どれだけ有り難いか。試しに女を抱く事を想像してみるが、それだけで背中に寒気が走る。想像だけで血が引くとは、むしろ性癖は悪化しているようだった。
激動の年が、始まる。しかしその年の始まりは、良い酒と響く鐘のゆったりとした音に満足し、いつの間にか居眠りしてしまった皆の寝息により迎えられた。驚くほどに、静かな幕開けであった。