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鮮やかな青
第4章 激動の年
毛利本家へ向かうための道中、私はずっと気まずさに襲われていた。出来る事なら、使者でも送って済ませておきたい。だが父は、私が帰るものだと思って手紙を寄越すのだ。いつまでも逃げている訳にもいかなかった。
兄は、どんな顔で私を迎えるだろうか。もやもやとした思いを抱えたまま、吉田郡山城に辿り着く。出迎えてくれたのは、まさしくその兄だった。
「久し振りだね、隆景」
いつもの兄と、全く変わらない声。息を吐けば寒さで白く曇るが、表情に曇りはない。気が抜けるような、穏やかな人。喧嘩別れしたはずなのに、兄は何一つ変わらず私の前へ姿を現した。
「――明けまして、おめでとうございます」
「明けましておめでとう。まあ寒いから、堅苦しい話をするより先においで」
寒さでほんのりと赤くなった頬を緩ませ、兄は歩き出す。言いたい事は山ほどあるはずなのに、私は何も言葉が出てこなかった。
「父様はもちろん、皆隆景に会えるのを楽しみにしているよ。そうそう、宍戸殿と五龍も夫婦で来てくれてね。元春も妻子を連れて来たし、今夜は賑やかになるぞ」