この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
鮮やかな青
第4章 激動の年
自分の手柄を主張せず、あくまで相手を立てる。兄は損をする気質であるが、それは好ましいものだった。
「農民だろうと商人だろうと、人には生きる目的がある。それが定まらない人間相手では、いくらこちらが呼び掛けても運命は変わらないんだ。けれど信念を抱えていても、その叶え方を知らない人間もいる。そんな人間の援助は、僕達土地を治める者の仕事だと思うんだ」
さらに続く兄の言葉に、私はずっと聞きそびれていた話を思い出す。将と王の違い。大内が兄を王だと言う理由が、私にも掴めた気がした。
「兄様は、どうして酒師が援助の必要な人間だと分かったのですか? 目的のある人間と、ない人間にはどんな違いがあるのでしょうか」
「うーん……別に、分かった訳じゃないよ。ただ、隆景が信頼して任せた乃美殿の選んだ人間だから、きっと愚か者ではないと思っただけ。それと、手広く商売したくないって断られた事かな」
「それがどうして、援助に繋がるのですか?」
「もちろん言葉の通り面倒臭がってる場合もあるけど、大口の依頼に対する不安から断る事もあるから。今まで小さな輪を回していたものが、突然武家から依頼だなんて恐ろしいだろう?」