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鮮やかな青
第4章 激動の年
「そうだね、半分にすれば負担も減るし、もう少し値も上げられる。人ってね、やっぱり数字で見ると価値がよく分かるんだよ。自分にはこれだけ高値をつけられる価値があるんだと分かれば、自信になる。もう半分も奪ってやりたいと、競争心が生まれる。それはさらなる一歩になる」
「しかし、来年はどうするんです? 去年より値を下げたら、価値が下がったように見えませんか?」
「それは大丈夫。半分から全てに量が増えた分、割り引きの交渉は有利に進むはずだよ。それに向こうは取引の利を、既に知っている。知っていれば危険と利益を天秤に掛けて、どちらが大きいか計算できる」
こちらの利もさりげなく計算している辺り、兄は意外に抜け目がない。援助と称して自らの家が破綻しては元も子もないのだ。
「それだけじゃない。高値から適正値へ戻しただけなのに、向こうは『こんなにも割り引いてやった』と、大きな貸しを作ったような気分にもなるだろう。優越感も、度が過ぎなければ自信になる。傲慢に変わらないよう、操作する必要はあるけれど」
兄は再び前を向き足を進めると、ぽつりと呟く。
「僕が口出ししなくても、隆景や皆なら大丈夫だと思うけどね」