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鮮やかな青
第4章 激動の年
どうしてこの人は、そういう大事な言葉をついでのように呟くのだろうか。手紙を読んでいても思うが、一番大事な話は誰にでも理解出来るよう、まず初めに分かりやすく伝えてほしいものだ。
お前なら大丈夫、と深く信頼されている。その気持ちが、どんなに嬉しいか。ここまで人の心を察する兄なら、分からないはずがないのに。
けれど、兄が私を見ていないのは幸運でもあった。顔から、火が出るほど熱い。心臓が、飛び出そうなくらい高鳴っている。面と向かって言われたら、おそらく私は平静を保つ事など出来ない。今だって、立ち止まらず歩くのが精一杯だというのに。
私は、兄の書状の意図を、半分しか理解出来ていなかった。本来ならば、それを悔しがり己の浅慮を嘆くべき場面だ。
しかし、この人が大丈夫だと言ってくださるのなら、私は大丈夫かもしれない。嘆く気持ちも吹き飛び、ただ激情に駆られていた。
だが、この想いをどう発散すればいいか分からない。悶々と溜まる気持ちを誤魔化そうとよそ見すれば、私はある事に気付く。
「……兄様、どちらへ向かわれているのですか?」