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鮮やかな青
第5章 月の影
「このまま陶に従い、手駒となるのはまっぴらごめんです! 義隆様の仇を討つため、挙兵すべきでしょう!」
「兄様、少し落ち着いてください。陶と対立したとして、どう討ち破るおつもりですか? 義隆に味方した者は少なく、それもほとんど陶の手で殺害されています。大内家の兵力をほぼ丸ごと受け継いだ相手に、我らで何が出来るのですか」
「それは……しかし、大義はこちらにあるだろう!」
「だからこそ落ち着けと言っているのです。主を討った不忠の士に、義理堅く忠を注ぐ者はありません。今は混乱し大きな問題が起きずとも、どうせすぐに不満が噴出し家中は崩れるでしょう。討って出るのは、その時にすべきです」
義隆の死を望んだのも大内家の臣、陶を不忠と罵るのも同じ臣、なんとも理不尽な話だが、それが通ってしまう恐ろしい世界が武士というものだ。手のひらを返すきざしは、すでに現れている。だからこそ謀反というものは、難しいのだ。
「ま、それが無難な策だろうな」
私の意見に頷き口を開いたのは、元春兄上だった。戦に関して、元春兄上ほど頼りになるものはない。皆が期待し、耳を傾けた。