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鮮やかな青
第5章 月の影
 
「俺には義兄弟の誓いがある……が、共倒れはごめんだ。隆房、いや、晴賢に改名したんだったな。晴賢は各地の混乱を沈めるため兵を出すよう求めているが、正直俺はやる気になれん。どうせ従ったところで、ろくな恩賞もないに決まっているからな」

 義隆が存命中、毛利は数々の戦いで、大内家のため大きな犠牲を払い戦っている。にも関わらず、向こうは大した見返りを与えてはこなかった。

 こちらが命がけで奪った城を接収され、父が激昂したのはいつの事だったか。義隆ですらそれなのだから、義隆より器量の小さな陶が、新たな領土を得られる訳でもない乱を収めた後に、気前良く毛利へ恩賞を与えるとは考えにくかった。

「こっちは何千何万の命を預かっているんだ、泥船に乗る気はない。兄貴だって、無用な犠牲は払いたくないだろ」

「それは、僕だって……避けたいけれど」

「じゃあ、今は隆景の案に乗るべきだ。今、無策のまま挙兵する利はない。とはいえ陶に従う理由もない。機を窺うべきだ」

 兄は渦巻く思いに唇を噛みしめながらも、小さく頷く。兄は、皆の命を挙げてもなお怒りに身を任せるような人間ではなかった。
 
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