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鮮やかな青
第5章 月の影
評定が終わると、私は父に捕まり長話を聞かされる。要約すれば力を合わせて頑張ろうといった内容なのだが、冗長な物言いに私は眠気を覚えてしまった。
ようやく解放された後、私は城内を眠気覚ましに遠回りしながら、今晩泊まる屋敷に帰ろうと足を進める。「それ」を見てしまったのは、全くの不可抗力だった。
「困りますな、若殿」
曲がり角の先から聞こえてきたのは、父が毛利の当主となった頃からの重臣、兄の側近である赤川元保殿の声だった。明らかに嫌味を含んだ口調に、私は歩みを止める。もしや人払いをするような話かと思ったが、辺りに小姓の姿はなかった。
そっと曲がり角の先を覗いてみれば、やはり人の姿はない。だが部屋の襖が開きっぱなしになっている、おそらく赤川殿は、その中で話をしているのだろう。
「毛利の次期当主は若殿なのですから、弟君に後れを取ってはなりませぬ」
古参の家臣である赤川殿も、当然先程の評定には参加している。つまり事の顛末は、全て知っているのだ。その苦言は、間違いなく私と兄を比べるものだった。