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鮮やかな青
第5章 月の影
「若殿が大きく構える姿を見せなければ、いつまで経っても跡取りと認められませんぞ。怒りに身を任せ、冷静を失うなどもってのほか。これでは、弟君が継いだ方がましだと言われます」
「……激昂した事は、謝るよ。しかし」
「しかしも何もありません。くれぐれも、若殿が主導しているのだと思われるような振る舞いを取るように」
確かに先の評定は、怒る兄を私や元春兄上が止めた形だった。とはいえ、それも全て父の掌の上。思った以上に激しかったが、兄が大内に肩入れしなければ父が困るのだ。だが周りから見れば、判断を見誤る長兄に見えたのかもしれない。
「それより元保、最近皆、どうにも気が緩んでいないか? まだ火鉢を使う寒さでもないのに引っ張り出しているとか。寒いからとすぐ部屋に引っ込んでは、夜の見回りの際どうするんだ」
「そんな小さな事にこだわるから、若殿は狭量だと言われるのです。多少なら構わんでしょう、それで死ぬわけでもあるまいに」
「だが、小さな事を守れない人間が、どうして大きな事を守れるんだ。僕が言いたいのは、つまり――」
「皆をうんざりさせて何か得になりますか? 大殿なら、そんな事は言いませんがね」