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鮮やかな青
第5章 月の影
潜伏の時は、静かに流れる。陶が家中を治めるため動くのに付き合わされたりもしたが、毛利は密かに力を蓄え潜んでいた。
来たるべき時に備えて、小早川も一つの区切りを迎えようとしていた。かねてから進めていた、新たな居城――新高山城が、完成したのだ。
城というものは、やはり武士にとって夢である。それを一から自分で考え作る幸せは、何にも代え難い。堀や土塁、積まれた石垣、何度も視察はしていたが、自分が頭に思い描いた守備が現実になるのを目にすれば、心が躍らずにはいられなかった。
「景さま、今日はとても嬉しそうですね」
城をしっかりと把握したい、と言い出し、共に巡るともが、私に笑みを向ける。子どもの成長というものは早いもので、ともは背も伸び顔つきもしっかりとしてきた。といっても、まだ十の幼子。城全体を回るのに少し疲れたのか、汗が浮かんでいる。私は立ち止まり深呼吸すると、適当な木に背を預けた。
「自分の城が出来たんだ、今日ほど嬉しい日はないよ。おいで、ここからだと、よく空が見える」
空など顔を上げればどこでもよく見えるが、休む口実になればそれでいい。ともが側に寄ると、私はそれを抱き留めた。