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鮮やかな青
第5章 月の影
幸い、今のところともに対して嫌悪を抱いた事はない。空がよく見えるかと抱き上げてみれば、ともの体は私の両腕だけが頼りになる。それでもしっかりと、私はともに触れられていた。
「景さま、その……重く、ないですか?」
ともはうろたえ、妙な事を訊ねてくる。確かに私は特段力のある方ではないが、子ども一人持ち上げられない程ではない。落とされはしないかと、不安なのだろうか。
「大丈夫だよ。米俵に比べれば、ずっと軽い」
だが安心させようと放った言葉は、ますますともを不機嫌に変えてしまった。
「景さまは、人の心に聡いのか鈍いのか、よく分かりません」
一体、何がいけなかったのか。しかし私が再び口を開く前に、ともは一人で気持ちを切り替えたようだ。私の着物を掴むと、空を仰いだ。
「まだ、戦は続きますか?」
「そうだね、せっかく完成した城だけど……しばらくは、留守を預かってもらう事になりそうだ。まだまだ、この地は乱れるだろうから……」
「わたし、お城の事をたくさん勉強しているんです。景さまが留守にしても、安心して戦に出られるように」