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魔法の右手
第6章 優しくしないで
依莉は暫く俯いたまま涙を流した。



“幸せになれる資格が無い”



その意味が未だハッキリとはわからないが、結婚と仕事の両立で悩んでるとしたら、なんの拷問だよ……と思ったが、また別の話らしい…。


ガキの頃から一緒にいて、あまり依莉の涙を見た事の無い俺は、正直驚いた。

依莉はいつも笑顔で、目の前の事しか見えていない不器用な奴で、女にしてはガサツな男みたいなところはあるが、自分の事より、他人を優先して自分の思いを溜め込むところがある…。


ずっと見てんだから、依莉の事は俺が1番よく知っている自信がある。


依莉の気持ちがおさまるまで、俺はなにも言わずただただ隣にいた。

“涙の理由”がなんのかわからないが、たぶん…俺の勘だけど…自分の行動で誰かを苦しめているのかもしれない…。そんなふうに感じた。





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