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タワーマンションの恋人
第8章 * ハルキ
この仕事をしていると、楽しいだけでは済まされない。気が滅入ることも悩むこともある。
むしろ、落ち込んでることの方が多いんじゃないかとすら思ってしまう。
演じるように、仕事をこなしている。
目の前の相手に恋をして、彼女になる。
だけど、そうして日々移り変わる自分の気持ちに自分自身、置いてけぼりを食らってしまうことがある。
少しだけ、疲れてしまう。
そんな時に、ハルキは部屋にやって来た。
会うのは2回目だった。
「華ちゃん。どうしたの?ここ。」
そう言われて指をさされたのは腕には何ヶ所か青痣が出来ていた。
視線を動かす彼の視線の先、ルームウェアのワンピースから覗く脛の辺りにもいくつかの痣があった。
思い当たることはいくつかあった。
激しく求められれば、四肢を打ってしまうことが良くあった。
それは自分でもその時は気が付かなくて。
こうして後々、痕跡として表れる。
彼らの中にも、彼ら用のルールがあるらしくその中のひとつが「キスマークはつけない」というもの。
それは、わたしたちが独占されてはならない存在だから。
痕跡を残してはいけないから。
ただ、キスマークではない、不可抗力で出来てしまった手足の痣も、場合によっては生々しい痕跡となる。
「ごめん、華ちゃん。ちょっと見せて?」
そう言ってハルキは真剣な顔でわたしの腕を手に取った。
しばらく訝しげな目でわたしを眺めると彼はふわりとわたしを抱きしめた。
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