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タワーマンションの恋人
第8章 * ハルキ


躊躇いが感じられるような柔らかいそのキスに縋るように舌を絡めたのはわたしだった。


彼の指が頬に触れて、受け入れて貰えた気がしてなんとも言えない幸福感に満たされる。

ちゅっと音をたてて離れた唇が名残惜しくて彼を見上げると少し眉を下げた彼が優しい目をして笑った。



「ハルキ…?」

「ん?」

「ハルキは大好きだった女の子が居たんだよね?」

「うん、奥原さんに聞いたの?」

彼の指が赤ちゃんに触れるような優しい動きでわたしの顔のパーツを撫でる。

くすぐったくて目を閉じて身を任せてみる。

「ハルキに愛された女の子は、幸せものだね?」

「そんなん言われたら照れるじゃん。」

目尻を下げてくすぐったそう笑うハルキがかっこ良くて優しくて、今伝えた言葉に嘘はなくて。


「その子のこと、好きなまま別れちゃったんだよね?」

「うん、まぁ…でも、今は吹っ切れてるけどね?」

「ハルキ、変なこと言ってもいい?」

「んー?良いよ?なに?」

その優しい視線を受け止めると、過去にこの人の愛を一身に受け取った人を羨ましく思う。


「ハルキに…愛されたい。ここに、この部屋に居る時だけで良いからっ…」

こんなこと言って、気持ち悪いなんて思われたら、もう彼はここに来てくれないかもしれない。
だから、わたしなりの大きな賭けだった。


「え?俺に…?」

身体の相性なんて言葉の意味は経験を重ねる上で学んできたつもりだった。
だけど、わたしはわからなかった。知らなかった。
愛のあるセックスだとか、繋がりだとか。

心から満たされるとか、幸せとか、むしろ今まで求めたこともなかったのかもしれない。


だけど、彼に触れてから、彼を知ってから…知りたいと思った。
愛のある行為、誰かを真剣に愛したことのある彼なら、知っているんじゃないか、なんて。



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