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タワーマンションの恋人
第9章 * ナナミ
「元々ね、芸能界に憧れて上京してきたんだ。」
ナナミさんは高校を卒業してすぐ上京してきたと話してくれた。
「親の反対を無視してて、なんてよくある話でしょ?大成するまで絶対に帰らないって決めて上京したんだぁ。」
「…ナナミさんなら、引く手あまただったんじゃないんですか?」
ナナミさん所属していたいたという事務所も業界大手。
きっと入るだけでも相当狭き門だったのだろう。
「全っ然だよー。なんとか事務所は決まったけど、仕事が決まらなくて。バイトばっかりしてたよー。生きるので精一杯って感じだったなぁ。」
今、目の前でキラキラと笑うナナミさんからは想像できなかった。
思い出を辿るように彼女は続けた。
「でも、オーディションとかあるから自分のメンテナンスもしたい、でも生活が苦しい、日々バイト、ボロボロになる。みたいな悪循環で。…そんな時に、この仕事の話、もらったんだ。ハタチになったばかりくらいかな。」
「そうだったんですね…。」
「ハタチって、業界だともうギリギリの年齢だから、悩んでたし、なによりお金が無かったし…。情けない話だけどね。期間限定って約束でやることに決めたの。」
「でも、すごい。ハタチでその決断を出すの、大きいですよね。」
「そうだねぇ。でも、誰にももう頼れなかったし。とりあえずやるしかないって思ったの。期間が終われば、また夢追えるってその頃は思ってたし。バカだよね。」
そう言って、彼女は少し悲しげに笑った。
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