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タワーマンションの恋人
第9章 * ナナミ





「この仕事をしたら、夢はもう追えないってすぐに気がついたんだよね。…彼らと同じ土俵にはもう立てないんだ、わたし。って。」


「…辛く、なかったですか?」   



大成する、そう決めた女の子が見た夢の結末はあまりに胸が苦しくて、思わず尋ねてみた。



「…最初はね。…でもね?彼らと接してるうちに、考えが変わったの。」


「考え?」


「担当してる子が活躍すると嬉しくて。彼らがね、わたしの夢になってた。だから、相談に乗るのも楽しかったし、仕事の愚痴聞くのも、トレーニングとか稽古に付き合うのも楽しかった。」
 


彼らを夢だと言うナナミさんの表情は本当に穏やかで優しい顔をしていた。



「…そう思いはじめたら、この仕事を恥じなくなったし、楽しめるようになったんだ。最初はすごく悩んだけどね。」


「わたしもいつか、そんなふうに、思えるときが来るかな……ナナミさんみたいに…なれますかね?」


芯が通った女性。
覚悟を決めてこの仕事に臨んでる姿勢が格好良くて、わたしにまで優しくしてくれる温かさが嬉しくて。
心底、いつかナナミさんみたいな女性になりたいと思った。


「…わたしなんかより、すごい子になるよ、華ちゃんは。」


そう笑うと彼女はわたしの頭をポンポンと撫でてくれた。





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