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タワーマンションの恋人
第9章 * ナナミ
「ナナミと、すっかり仲良くなったみたいね?」
ナナミさんの住んでいるマンションからの帰り道、車内で奥原さんが言った。
「はい。すごく優しくして頂いて…。」
「あの子、本当に良い子なのよ。良い子すぎて、逆に業界では埋もれちゃったような子だからね。」
「お話出来て、嬉しかったです。あっ!連絡先も交換したんです。」
そう伝えると奥原さんは楽しそうに笑った。
「良かった、良かったっ。同じ仕事してる同士しかわからないこともあると思うし、頼ってあげて。ナナミも喜ぶと思う。」
「はいっ。会わせて頂いて、本当にありがとうございましたっ。またお仕事頑張りますね。」
そう伝えれば「よろしくお願いしますっ。」と恭しく頭を下げるから、思わず笑ってしまう。
「やめてください、奥原さんっ」
「本当に華には感謝してるからさ。これからもよろしくね?」
「はいっ」
胸に引っ掛かっていた刺のようなものが溶け、ひとりじゃない、そう実感できた。
タワーマンションの一室で、同じ仕事をしてる人が、居ることが心強かった。
それがナナミさんという、素敵な人だったから更に励まされたんだ。
彼らにもっと愛される人に、彼らの前でもっと輝く人になりたい。
そんなことを、密かに胸で唱えていた。
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