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タワーマンションの恋人
第10章 * シュウタ
「…わたしにも、興味ない…?」
畳み掛けるように言葉を続けると彼はまた少し笑って、目の前の小さなテーブルを押し避けた。
「興味なかったら、こんな時間まで話聞いてないよ。」
静かに言ったその声が溶けるように耳に馴染んで、伺うようにも、狩るようにも見える視線に動けなくなる。
わたしたちの前からローテーブルが消え、間を仕切るものはなにも無くなった。
「勝負、しよっか。」
なにか素敵なサプライズでも仕掛けてるかのような、悪戯っぽく、なんだかすごく無邪気な表情で彼は言う。
「…勝負…?」
「仕事としてここに居るなら、プロとしてここに居るってことだよね?」
「は、い…。」
「…なら、俺のこと落としてみてよ。…しばらく本気な恋愛とかしてないからさ、ドキドキさせてくんない?……で、俺がまたここに来たいと思ったら華ちゃんの勝ち。どう?」
そんな提案をされて果たしてどう答えるのがプロなのか、正解なのかもわからずに少しだけ悩んでから答えた。
「…わたしの仕事のやり方は…目の前のその人を好きになります。本気で、恋するつもりで。」
「…ふーん、なんか役を演じるのと似てるね。」
「そうかも…。だから、お願いがあるの。シュウタさんも、演技でいいから。疲れない範囲で良いから、わたしのこと好いて?」
ラグに座る彼ににじり寄り、彼の膝の上に乗っていた手に自分の手を重ねた。
「それで、また会いたくなったら、わたしの勝ち。わたしへの興味が失せたらシュウタさんの勝ち。」
「…ん、わかった。いいよ。」
彼は目を少し細めた大人びた視線でわたしを見つめ、そう答えた。
そうして彼の細い指がわたしの顎に添えられると、引き寄せるように動き、水々しい音と共に唇が重なった。
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