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タワーマンションの恋人
第11章 * 虚像





「シオンの好きなもの、作るよ。何食べたい?」


「…華のオススメ。任せる。」


力なく笑った彼は投げた鞄から台本を取り出した。


「ご飯、出来るまで、読むわ。…頑張る。」


「やっぱりシオンは流石だね。」


煌めく金髪に触れてから、わたしはキッチンに向かった。

夕食にしては少々遅い時間、明日も朝早くから撮影の彼の為にはどんなメニューが良いのか考える。


ソファーで真剣な顔をして台本を読むシオンを見ながら料理してると、すぐにでも駆け寄って、髪を撫でて、偉いね、と褒めてあげたい気分になる。


18歳という齢で彼の背負う不安やプレッシャーは計り知れないだろう。
周りの大人たちが託した彼のキャラクターやイメージ、その中に潜む本来のシオンが見え隠れすると、わたしはどうしても彼に甘くなってしまう。




余裕の笑みの下に隠した本来の彼のことがわたしは気になって仕方がないんだ。


だから、弱音を吐いてくれたこと、弱い部分を見せてくれたこと、嬉しくて仕方なかった。





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