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タワーマンションの恋人
第13章 * 痕跡
「華、なんかあった?」
「へ?どうして?」
キスの合間にそんなことを聞かれて動作が止まる。
「なんとなく?」
そう言って余裕の笑みを浮かべるからうっかり口を滑らせてしまった。
「シュウタくんは、わたしのこと好き?」
そう尋ねれば、またふっと笑って「嫌いだったらここに居ないよ」と聞き心地のいい声が耳元に流れ込む。
「どうして?華は俺のこと嫌い?」
「ううん、好き。」
「なら、よかった。」そう言ってちゅっと塞がれる唇。
「わたし、シュウタくんが綺麗な女優さんとラブシーンとかあったらきっと嫉妬しちゃう。」
「え?なにそれ。」少し嬉しそうに笑うとわたしの頬を包む。
「わたし、こんなだから、いつか嫌われちゃうんじゃないかなって不安なの。」
「嫌いになんてならないよ。俺は。」
そこまで話すと彼はなにかを理解したかのような顔をして、そっと話を続けた。
「例えば、俺が女優とラブシーンがあったとして、それは仕事でしょ?」
「うん。」
「華が、色んな人と色んな時間を過ごすのも仕事。そうでしょ?」
「う、ん。」
「だから、俺は別に気にしないよ。華が好きって言ってくれるならその言葉を信じるし、背景は関係ないよ。」
そう言って首筋に顔を埋める。
「俺は、俺のやり方で華の特別になるよ。」
「…っシュウタくんの?やり、方…?」
「うん。俺しか出来ないやり方で華を抱くし、華の身体に俺を覚えさせる。」
彼と視線が合うと、その鋭さに胸が高まる。
「目に見えない形で、俺は華に、俺の痕跡を残してるつもり。」
彼の指先が這うだけで、また呼吸が荒くなる。
「だから、この時間は…余計なこと考えないで、俺のことだけ見てろ。」