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タワーマンションの恋人
第20章 * Compatibility
シュウタくんの背中を追う奥原さんの視線は柔らかくて、ふっと笑う。
「シュウタ、華から一時も離れようとしなかったのよ」
「へ…?」
「シュウタ、救急車を呼んでからわたしに連絡してきたの。わたしがすぐ行くからシュウタは救急車に乗らなくていい。って言ったのよ。そしたら『ふざけんな、華になんかあったらどうすんだよ!』って怒鳴られちゃったわ。」
そう言って少し眉を下げて笑った。
「あの子、いつも優等生で真面目で。任せた仕事はなんでも出来ちゃう子だから。なんか人間味薄くて。だけど、あんなに感情的に物を言ってくるんだもん、驚いたわ。あの通り着の身着のまま、あのままの姿で救急車に乗って、片時も離れなかった。」
「シュウタくんに、迷惑かけちゃいましたよね…」
着の身着のまま、それは帽子もマスクもサングラスもしないまま、わたしを救急車に乗せて病院まで付き添ってくれたということ。
女と二人の部屋に居たことが世間にバレてしまうかもしれないリスクを背負って彼はわたしに付き添ってくれた。…とんでもない迷惑を彼にかけてしまった。
「はぁ…。本当わたし、なにしてんだろう、本当にごめんなさい。そんなリスク背負わせて…わたし、この仕事する資格ない、」
そう呟けば奥原さんはわたしの頭をそっと撫でた。