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タワーマンションの恋人
第20章 * Compatibility





「確かに、迷惑かけたかもね?」


「はい…。」


「シュウタのあんな顔、初めてみたもの。」


「あんな顔?」そう聞き返せばやっぱり奥原さんは楽しそうに笑った。


「あんなに必死で、あんなに焦ったシュウタ、みたことないのよ。いつも冷静でソツがない子だからねぇ。」


わたしの知ってるシュウタくんも、そう。
大人で冷静で、少し意地悪だけど根底の優しさを隠せない人。



「シュウタの心を、揺すぶる存在なのよ。華は。」


「シュウタくんの、心?」


「今まで、どんなにプレッシャーのかかる仕事でも、大きな仕事でも、取り乱したり感情的になるシュウタって見てないのよ。もちろん、そういう演技をしてるシュウタはみたことあるけど、一個人、中原 柊太としては一度だってなかった。」


シュウタくんは思っていた通り、プロ中のプロなのだと実感する。
仕事のプレッシャーで心のバランスを多かれ少なかれ乱すみんなの様子をわたしは間近で見てきた。

だけど、シュウタくんはいつだっていつものシュウタくんだった。
そつがなくて、仕事に対してまっすぐで一生懸命で、なんでも出来てしまう…ように見えるけど本当は誰よりストイックな努力家。


「そんなシュウタを唯一乱すのが、華なんだって、今日改めて思ったわ。」

そう言って笑いわたしの肩を抱きしめた。
「迷惑なんて、大丈夫よ。ここ、うちの事務所お抱えの病院だし、守秘義務もあるから、シュウタのことは漏らさせないから。」


「…それなら、よかったです…。」

安心して涙が出そうになると「あら、泣いちゃうの?それなら選手交代ね?」と立ち上がって病室を出て行った。






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