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タワーマンションの恋人
第20章 * Compatibility
リビングの一番大きな窓のカーテンが少し開いている。
「夜が明けるよ、見る?」
時間感覚が消えていたわたしはその言葉で今の時間を察する。
「うん、見る。」
彼はそのままわたしを背中に乗せてベランダに出ていく。
「空気が澄んでるね。」
そう呟くと「うん」とだけ彼は答えた。
「この空、すきだったなぁ。夜の色からだんだんグラデーションで明るくなっていくの。」
「すきだった?」振り向いて聞き返す彼に続きを話す。
「うん。学生の頃、寝れない時、よくこの空見てた。気がついたら夜明けになってて。でも、なんかそれだけで爽やかな気持ちなってたなぁ、いつも。」
そう言うと「そっか」と彼は少し笑ってから「俺も一緒だよ。」と呟いた。
「一緒?」
「眠れなくて、この空よく見てた。だから好きなんだ、夜明けが今でも。」
そう答えた彼が愛おしくて更にぎゅっと首に回した手に力を込める。
「ベランダから見るのも好きだったけど、あそこから見るのも好き。」
そう言って彼が指差した場所は高速道路。
まだヘッドライトをつけた車が空に吸い込まれそうな勢いで走っていく。
「高速道路…?」
「高速を明け方、車で走るとさ。気持ちがいいんだよね。悩みとかプレッシャーとか全部空に吸い込まれてく感じ?夜が明けた頃にはすっかり頭ン中切り替わってんの。」
彼の頬にそっと頬を寄せる。
シュウタくんのそういう感性が好きだなぁ、と尊敬に似た思いで慕ってしまう。