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タワーマンションの恋人
第21章 * girls talk
「…契約違反、しちゃいそうだったから…」
そう呟けば、ナナミさんはキョトンとして首を傾げた。
「この仕事を契約した時…大森さんってわかります…?」
「あぁー大森さん!わかるよ、なかなかイケメンのおじさん。事務所の幹部だよね。」
「その大森さんに言われたんです。誰のことも好きになったらいけない、みんなに平等に。って。タレントの不利益になるような感情を抱かない。って言う契約をしたんです、だから…」
「…だから?」
「…わたし、馬鹿だからうっかり、そんな感情持ちそうになっちゃって…。ハルキ、優しいから…。怖くなったんです。ちゃんと仕事として向き合えなくなりそうで。」
そこまで話してナナミさんを見るといつもニコニコしているはずの彼女がとてもまっすぐな真剣な目でこちらを見ていた。
「…華ちゃんの、その気持ちは…。ハルキくんにとって、不利益になる感情なの?」
そう尋ねられて、思わず言葉に詰まる。
「相手に対する好意は…この仕事をしている上で総じて不利益だと思っていて…。この好意は、彼に対してなにも生み出さないから、」
「…わたしは、そんなことないと思うけどなぁ。ハルキくんはきっと嬉しいと思うよ、華ちゃんからの好意。」
「だけど、この先の彼の活動にプラスになるとは思えなくて、この気持ちは先がないし、どうにもならないから……なんて、色々言いましたけど、結局自分の中で気持ちの折り合いがつかないだけなんです。」
そこまで言うと「折り合い…そうだね、それはわかるよ。」とナナミさんは笑った。