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タワーマンションの恋人
第22章 * romantic rival
コールが途切れて、電話越しにガサガサと音がする。
スマホがカバンの中なのか、なんなのか、音の正体に頭をひねっていると、遠くで声のようなものが聞こえて、改めて華の声がする。
「…もし、もし?」
いつもより落ち着いた小さめの声。
「もしもし、華?ごめんね、今大丈夫?」
そう問い掛ければ「ん、大丈夫」と短い返事のあとにやたら艶めかしい溜め息が聞こえる。
「ちょっと、声聞きたくて。こんな時間にごめん。」
「ううんっ…大丈夫、」
なんとなく辛そうな声と苦しそうな呼吸を聞いて、頭のどこかでは警報がなっていた。
電話は切ったほうがいい、そんな気がした。
「華、今ひとり?」
警告を無視して踏み込んだのは俺だった。
「ん?ひとり、だよ?」
熱っぽい声は言葉の端々に色気を含んでいる。
「なら、良いんだけど…」
そう答えると、言葉を発する前に「あぅっ…」と彼女の高い声を電話が拾った。
「ごめん、夜遅いのに。また会えるの楽しみにしてるから。」
それだけ早口に伝えると「…ケイ、タ…」と彼女が名前を呼んだ。
「ん?」
「っ…はぁ、ごめんね、」
その熱を含んだ声でその言葉だけ電話から流れ込んできた。
その後、またゴソゴソと音がしてゴツンとスマホが落下するような音がした後、人の声が聞こえた。
「もう、切ったよ」
「っ…うぅ、ひどいよ、フミっ…」
華の泣き声がして、彼女はフミ、と名前を口にした。
「よく我慢できました。…って、出来てなかったっけ?」
「ひゃっ…!あぅっ!あぁっ…!」
「気持ちいい?」
「あぁん、やだぁ、」
「やじゃないでしょ、こんなに締め付けて。」
電話を、切らなきゃ、切らなきゃ。
そう思うほど、手も頭も働かなくて、ただただ、音声が耳から流れ込んでいた。