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タワーマンションの恋人
第22章 * romantic rival
寝付けずにリビングを抜けてベランダに出た。
これほど、虚無感と罪悪感に襲われたことはない。
数口タバコを吸うと後ろから声がする。
「フミヤ?」
振向けばそこには華がいて、不安そうに近づいてくる。
「…………」
「ここに居たんだね?」
柔らかい声で言う華に素直に頷くことすらできない俺は子どもで。
気まずい雰囲気を断ち切るべきなんだろうけど、上手く立ち回れなくて。
中途半端に俯くことしか出来なくて。
身体、大丈夫?とか、あんなことしてごめん。とか彼女に伝えなければならないことは沢山あるのに言葉にならなくて震える唇からゆっくり煙を吐いて、煙草を消した。
すると背中に重みが加わる。
「……華、」
「フミヤ。そんな顔しないで?」
柔らかい声がして、ホッとしたのか胸が痺れるように解けて目が熱くなる。
「フミヤは、優しいから。色んなこと一人で考えて、みんなのこと考えて…。だからたまにいっぱいいっぱいになっちゃうんだよね。」
「…っ、」
「そんなふうに、自分のこと後回しにしてたら。壊れちゃうよ、フミヤ。人だけじゃなくて、ちょっとは自分にも優しくしてあげてよ。」
「俺はっ…」優しくなんてないのに。
「わたしに申し訳ないって思ってる?」
「ごめん、俺っ…」
「そんな顔しないで?みんなに優しいフミヤのね?優しくない一面が見れるって、ちょっと特別な気がして、わたしは嫌じゃないよ?」
そんな風に言えてしまう、彼女こそきっと優しすぎるのに。
そのことに彼女は気がついてない。
そんなところが狂おしいくらいに愛おしくなる。