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タワーマンションの恋人
第22章 * romantic rival
次の日、仕事に向かう道中のバンの中でケイタに電話をした。
「…はい」
いつもより低めのケイタの声に心臓が締まる。
「俺、だけど…」
「俺って誰だよ、詐欺かよ。」と低い声で言った後、ケイタが吹き出すように笑うから驚いた。
「あの、さ、ケイタ。俺…」
「あ、俺も言うことあったんだわ。華のこと。」
被せるように言ったケイタの口から華の名前が出る。
「…あのなぁ、フミヤ。」
少しの間があってからケイタが続けた。
「……ちゃんと謝ったか?華に昨日のこと。」
まるで兄貴が弟を諭すような話し方で、なんだか昔を思い出して懐かしくなる。
昔から、ケイタは面倒見が良くて、優しくて、兄貴みたいに慕ってたはずなのにいつから俺はケイタをライバルだなんて思うようになったんだろう。
「…俺が言えたギリじゃないか…。フミヤ、お前知ってたんだもんな…俺が華の部屋行ってるの。すげーしんどかったでしょ。…ごめんな。」
「……華には謝ったよ。」
そこで一息ついてから、もう一度続ける。
「ケイタ、昨日はごめん。俺、」
「華に謝ったなら、俺に謝る必要ねぇよ。」
困ったような笑い声の後にまた名前を呼ばれる。
「きっと、俺がお前だったらもっと取り乱してたと思う。自分じゃ消化しきれなくて。俺、なんも知らずに好きな人の話とかしてさ。腹立っただろ?」
「そんなこと…」
「そういうの隠して、自分で消化しようとしたフミヤは本当に優しいよな。俺だったら態度とかに出ちゃうもん。」
「でも結局俺、あんなこと…」
「華の前では、感情を素直に出せんだろうなって思ったよ。」
落ち着いた声でそう言い、ケイタは続けた。
「フミヤ、俺も華のこと好きだよ。この気持ちは揺るがない。」