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タワーマンションの恋人
第23章 * double bind
久しぶりに会いに行く日、彼女に電話を掛けた。
電話がまた繋がるようになった、それだけでも嬉しくて、呼び出す音に胸が高鳴る。
「もしもし、華です。」
「もしもし、ハルキです。」
「っ…ふふ、真似しないでよー。」
二人の間に残る少しの気まずさを打ち消すように柔らかく笑ってから少し戯けたように彼女が言った。
「ね、華ちゃんってさ?お買い物行く時とかは、普通にマンション出るよね?」
「え?あ、うん。出るよ?なんで?」
「あのさ、最寄りの駅の近くにスーパーあるでしょ?そこまで行ける?出来れば、タクシーで駐車場まで。」
「行けるけど…どうしたの?なにか買っておくものある?」
「うん、ちょっと。よし、じゃあ、また着いたら教えてくれる?慌てなくて良いからね。」
そこまで話すと少しだけとまどった様子で「わかった」と答えてから電話が切れた。
しばらくするとタクシーが見えて、スマホが鳴った。
「もしもし、ハルキ?なに買っておけばいい?」
「あのさ、そのまま真っ直ぐ歩いてみて?」
「え?え?!なんで?」
「白のボックスワゴン見える?」
乗っていた車内で彼女を見つめて手を振ると彼女はギョッとした顔をしてからスマホから「え?!なにやってんの?!」と今まであまり聞いたことのない、驚きの声が流れてくる。
「ほら!そんなとこに美人が居ると目立つから!早く乗って!」
「え?!だめだよ!わたし…!」
「詳しい話はあと!良いから乗って!」
そこまで押し切ってやっと彼女は転がり込むように車に乗ってきた。