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タワーマンションの恋人
第23章 * double bind
「こうやって夜景を一緒に観ることとかさ、諦めたくなくて。ちょっと強行突破しちゃった。」
「ハルキは、いつもわたしを固定概念の外側に連れて行ってくれるね。…屋上に連れて行ってくれた時も、本当にすごく嬉しかったの。」
「華ちゃんもさ、諦めないで?普通の女の子で居ること。」
「……でも、わたしはやっぱり普通の女の子とは、違うから」
そこまで言った彼女の肩をそっと引き寄せて唇を重ねた。
「普通の女の子だよ、華ちゃんは。だから、もっと我儘になって良いと思う。あれがしたい、これがしたいって。」
彼女がなにかを諦めてしまってるのは気がついていた、それはきっと同世代の子たちが味わってるいる恋愛だとか、自由だとか。
「俺はそういう華ちゃんみたい。最初の頃のこと覚えてる?」
そう訪ねると彼女は「もちろん」と柔らかい笑顔を浮かべて頷いた。
「ハルキに愛されたいって、言ってくれたの覚えてる?」
「…うん、覚えてるよ。」
「俺、すごく嬉しかったんだ。この子の望むことは叶えたいって思ったし、あの時言った言葉に嘘はない。」
勢いよく涙が頬を伝って「ごめんね、なに泣いてるんだろっ、」なんて笑おうとするからそっと抱き締めた。
「っ、華ちゃん、愛してるよ。あの日からこの言葉に嘘はないから。…こういうの重く感じる?」
そう尋ねれば彼女は腕の中で首を振る。
「ちが、っ…わたし、ハルキが好きすぎてっ…怖くて、逃げたのっ、これ以上、好きになりたくないよっ…」
腕の中で身体を震わす愛おしい存在。
どうしようもなくて抱きしめる腕の力を少しだけ強めた。
「もう逃げないでよ、俺すげー寂しかったんだから。」
少しだけ明るい声で伝えると彼女は顔をあげた。